筋肉痛の問題点と
 その対抗策

静岡産業大学

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筋肉痛の問題点

スポーツをした翌日、朝起きたらひどい筋肉痛に悩まされた。そんな経験があるかもしれません。このような筋肉痛は、後日になってやってくることから、遅発性筋肉痛と呼ばれています。多くの研究で、遅発性筋肉痛のピークは運動をしてから約二日後にやってくると報告されています。そのため、翌朝の時点で筋肉痛がないから大丈夫だ、という油断は禁物です。

遅発性筋肉痛は、筋肉の痛みだけではなく、筋力や関節可動域の低下などといった身体機能の低下を伴うことがわかってきました(1)。もしあなたが「痛みを我慢しておけばいいんだ」と考えているとしたら、その考えは危険です。なぜなら、筋力や関節可動域が低下している状態では、普段通りのプレーが難しくなるかもしれないからです。普段の練習や試合では出来ていた動作が出来ない、といった状況は、競技力の低下や怪我を誘発することに繋がる可能性があります。そのため、遅発性筋肉痛をいかにして防ぐのか、という点を考えることになります。

筋肉痛への対策

ではどうすればよいのか。ある対策を講じれば、遅発性筋肉痛を回避することが期待できます。それは「筋肉が長くなりながら力を出す(ブレーキをかけるような)動作を避ける」ことです。この「長くなりながら力を出す動作」を繰り返す時、遅発性筋肉痛が生じやすいと考えられます。 例えば、階段を下りる時、身体が転がり落ちないよう、太腿の筋肉は、長くなりながらブレーキをかけるように力を出しています。階段を使うのは上りだけにして、下る時はエレベータを使うようにすれば、翌日以降に遅発性筋肉痛を経験する可能性は低くなるでしょう。日常生活だけを考えるのであれば、この対策は有効です。筋肉痛が起きている状況は、動きたくないと考えるのが自然ですので、激しい筋肉痛が生じることは、運動不足を引き起こしかねません。

しかし、高校生であるあなたが、特に部活動等でスポーツに励んでいるのであれば、「その動きは筋肉痛になるからやりたくない」と言うわけにもいきませんよね。そこで「いざという時(決勝戦など)、筋肉痛に悩まされないためにどうすればよいのか」を考えてみることが重要になるでしょう。

筋肉には、一度筋肉痛を経験すると、しばらく筋肉痛が出にくくなるという適応能力があります。これを「繰り返し効果」と呼んでいます。

例えば、激しい筋肉痛が生じる運動を行います。その後半年程度は、再び激しい筋肉痛が生じるような運動をしたとしても、生じる筋肉痛の程度が小さくなることが知られています(1)。

予選の後、数日後に決勝がある、という状況を想像してみてください。特に何も対策をしなければ、予選を終えた後、激しい遅発性筋肉痛が生じ、痛みを抱えながら決勝を迎えることになりかねません。一方、予選の前、例えば数週間前に筋肉痛を経験しておけば、予選後に遅発性筋肉痛に悩まされることなく決勝を迎えることができる可能性があります。

筋肉痛になるという状況は、とかくネガティブに捉えがちですが、大事な試合で力を発揮するための準備だと考えてみてはいかがでしょうか。

まだまだ分からないことだらけ

筋肉痛の問題点とその対抗策について述べてきました。しかし、ベストな対抗策、つまりどのような運動をどのタイミングで実施しておくことが一番良いのか、ということはよく分かっていません。これを明らかにすることは、スポーツ科学に課せられた使命であり、今まさに世界中で研究が進行中です。私もここ数年、国内外の研究者と協力しながら研究を進めています。

この記事に興味をもったあなたが大学でスポーツ科学に触れ、私と一緒に研究するような日が来たら、これほど嬉しいことはありません。

参考文献
1) Nosaka K, Sakamoto K, Newton M, Sacco P. How long does the protective effect on eccentric exercise-induced muscle damage last? Med Sci Sports Exerc.2001,33,1490-5

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