浜松就職戦線に異変あり?

浜松商工会議所 人材支援室

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『空前の売り手市場』と言われる就職戦線。にも関わらず、12人に一人は非正規雇用にも、一時的な仕事にも就けていないらしい。就職内定率が高く、企業の採用枠が余っているのにも関わらず、就職先を決定できない学生が多くいる。その理由は『需給のミスマッチ』。「内定はもらったが、大手じゃないので辞退しました」、「事務職を目指していたが書類が通らなくて」、「一生のことなので慎重に選びたい」…。「やりたいこと」を見つけ、こだわること自体は非常に大事であり、それ自体を否定するつもりもない。ただ、『空前の売り手市場』と言われる今の“カラクリ”はしっかりと知っておきたい。こんなデータがある。300人未満の会社の求人は6.45倍であるのに対し、5000人以上の会社では0.39倍しかない。これは2018年卒に対する求人倍率。要するに、『空前の売り手市場』は中小企業のみの話。大手企業は実に狭き門になっている。

では浜松の状況はどうなのだろうか。今回は、浜松商工会議所人材支援室の鈴木室長と深津室長代理に話を聞いた。

---全国的には売り手市場と言われていますが、浜松の実情はどうですか?

鈴木 大きな部分で言いますと、浜松も売り手市場で、働き手が足りていません。ただ足りてないのは現場の仕事。事務職などの職種では足りている状態です。ただ、多くの学生が求めるのは土日休みの事務職。ここで大きな“ミスマッチ”が生じているのが実情です。さらに浜松には、近隣県の大手企業からの求人も増えており、浜松から若者が流出しています。現場での人不足の解消としては外国人や高齢者に頼る会社も増えています。他にも最近では、現場作業も以前よりもクリーンな環境となり、省力化が図られたことで、女性が活躍するようになっているのも特徴です。

---就活でもミスマッチだけではなく、就業後のミスマッチもありますか?

深津 そうですね。入社後に思い描いていた仕事と違うことを理由に、すぐに退職されてしまう場合もあるようです。特に入社一年目は、会社全体を知る意味で、さまざまな業務を経験できる貴重な期間ですので、その後の自身の成長に繋がるようにプラスに捉えて取り組みたいですね。私たちが会社をご紹介する際にも同様なお話をさせていただいています。

---「いかにミスマッチを改善するか」が課題と言った所でしょうか?

鈴木 そうですね。“少子化”も要因のひとつになっていると思います。昔は子供の数が多かったので今ほど仕事を選べなかった。それが今は少子化なので何となく選べる気がする。それもミスマッチの原因のように思えます。例えば、現場仕事といっても、職場環境は格段に良くなっています。「何となくイヤ」というのではなく、学生さんにはぜひ生で現場を見て欲しいと思います。おもしろさに気付いて、間違いなく意識が大きく変わると思います。

---浜松の高校生の就職について教えてください。

鈴木 まず大事なことは就職の流れを知ることだと思います。浜松の場合、高校生への求人が非常に充実しており、全国的(地方都市)に見ても、その数・質ともにトップクラスです。しかも指定校推薦枠がある高校も多いので、大卒では競争率の高い会社にもスムーズに入社できるケースも多い。以前は大学に進学するほうが就職に有利でしたが、今では、逆に大学に行くことで就職が難しくなることもあります。自分の進路がはっきりと見えているのであれば、就職に強い実業高校をあえて選ぶという選択肢があってもいいかもしれません。

深津 その他、大学生も含めた傾向として、安定志向が非常に強くなっている気がします。進学先には、都市部の私立大よりも地方の国公立大を選ぶ学生さんが増えているようです。卒業後には公務員を目指して、県外の市町村にまで応募している声も聞かれます。これには本人の希望もさることながら、親御さんの意向も大きく影響しているのではないかと思います。ただ、公務員には幼児から高齢者までの全世代を対象に、議会から清掃工場に至るまでの幅広い職務があり、民間企業以上にやりたい仕事に就ける確率の低い職場でもあります。そういった民間企業との違いを理解したうえで、進路を選択できるといいですね。

---今の学生さんの就職先に対する考え方など分かる範囲で教えてください。

深津 選び方というか、仕事に求めることが多様化しています。「稼ぎたい」や、「出世したい」、「やりがいのある仕事をしたい」という理由以上に、「休みがキッチリ欲しい」や、「残業が少ない」など、プライベートな時間を大事にする学生さんが増えています。ワークライフバランスは確かに大切なことですが、毎週40時間を費やす仕事においても、充実感を味わえる選択をして欲しいと思います。

鈴木 小学生の多くは『夢』を持っています。それが、中学生、高校生と年齢を重ねるにつれて夢がなくなる。現実が見えてくるということもあるかもしれませんが、子供たちが新たな夢を見つけるための手伝いを誰もしていないということも、企業と学生とのミスマッチを生み出しているように感じます。夢がないからモチベーションがあがらない。就活の在り方も次のステージへ進むべきなのかもしれません。

---就活の次のステージとは?

鈴木 例えばですが、高校求人の場合、基本一社しか受けることができない。そこで内定をもらえば原則断ることができません。多くの場合は指定校求人ですから。そうであれば、その一社を決める前に、周りの人たちがもっと、夢や仕事、企業について相談に乗ったり、教えてあげられたりする環境が必要なのだと思います。

---今後、浜松で就活をする上で必要なことは?

鈴木 実際の所、学生さんだけではなく、きっと親御さんも浜松の企業のことをあまりご存じないと思います。我々はこんな仕事をしていますので分かりますが、そうでなければなかなか知る機会がないのが現実です。結果として、仕事内容ではなく、聞いたことのある企業名で就職先を選ぶ傾向がどうしても強くなってしまいます。親御さんに勧められるままに就職を決めた学生さんが、どんな仕事をするのかも分からないままミスマッチとなり、短期間で退職してしまうケースもよくあることです。だから、もっと親子で浜松の会社を知ってほしいと思います。浜松にはさまざまな業種・職種の企業があり、「こういうことがやりたい」さえ見つかれば、きっとお目当ての会社に出会えます。浜松には他の地方都市に比べ圧倒的に仕事が多い。浜松はとても恵まれた街なんです。そのことをできるだけ多くの学生さんに知ってほしいですし、浜松の企業の魅力を伝えていくことが私たちの役割だと思っています。

---浜松商工会議所さんでは、学生さんの就職をサポートする活動をされていると聞きましたが?

深津 はい。我々、人材支援室が学生さんの就職を内定まで無料でサポートしています。『就職寄り添い相談』を開設し、3年目となりました。浜松商工会議所が、これまでの経営支援を通じて築いた地元企業との太いパイプを活用し、学生さんの希望に添った就職先をご提案しています。遠方の方でもご相談できるようにLINEを使った無料の相談窓口を開設し、県外の大学へ進学した大学生や、都市部からの転職者など、1,400名を超える皆さまにご登録いただいております。人材支援室のメンバーがお一人お一人に個別で対応していますので、より密度の濃いサポートができていると思います。Uターン、Iターン就職における会社探しでぜひご活用ください。ご本人はもちろん、親御さんからのご相談も大歓迎です。

もはや、『空前の売り手市場』というのは幻想なのかもしれない。これからの就活に求められるのは、「どんな会社なのか?」を知り、「何の仕事をするのか?」を調べる情報収集力、さらには積極的に会社を訪問するなどの行動力、それが就活戦線を左右する。みんなを必要としている企業が、浜松にはきっとある。

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