スポーツと走る。

静岡産業大学

静岡産業大学誌上セミナー
講師/館 俊樹先生

一試合でどれくらい走っているの?

例えば、サッカーであれば一試合で10~13km程度の走行距離があると言われています。高校生以上の男性であればレベルによる差はあまりなく、概ねこの程度の走行距離だと考えられています。では、女性のサッカーに目を向けてみると、男性よりはやや少なく、概ね8~10kmを一試合で走っているようです。他の競技に目を向けると、バスケットボール5km、テニス1セット0.6~1.2km、ラグビー6kmと様々です。もちろん、コートのサイズ、プレーする時間・人数等それぞれ違うので一概にどのスポーツもたくさん走るとは言えないです。

走ると言ってもジョギングからスプリントまでいろいろ!

さて、様々なスポーツの走る距離については理解いただけたと思います。でも、走っている速さや時間はどうなのでしょうか?

走ること自体が競技となっている陸上をみてみると、100m走でウサイン・ボルト選手が世界記録を樹立した際の最高速度は時速約45kmでした。ただし、この速度に到達するのは60~70m区間になりますので、サッカーやテニス、バスケットの試合中にこの速さで走ることは難しそうです。これが、40km以上の距離を走るマラソンになると男性のトップ選手は概ね時速20km程度で走っています。どうやら、走る距離が変わると同じ全力であっても最大速度は変わってくるようです。

それでは、ボールゲームにおける走る速度はどれくらいなのでしょうか?サッカーにおける走りは数多くの研究で分析されていて、90分の試合時間の内、実際にプレーしているのが約60分、その7割程度の40分くらいはジョギングくらいの速度、残りの20分は短いスプリント(全力疾走・短距離走を意味する)で構成されています。このスプリントの内、9割以上が30m以下の距離で、そのうち半分が10m以下の距離だと言われています。また、男性のサッカーにおけるスプリントスピードはトッププレイヤーともなると時速30kmを超えてきます。これを、多い選手では一試合に50本以上行うというので驚きです。女性のサッカー選手の場合は、スプリント時のスピードは時速25km程度で、男性よりは少し遅くなるようです。

コートサイズがサッカーに比べて狭くなるテニスでは、スプリントの距離が短くなるため、走行速度も遅くなるようです。トップレベルの選手で試合時間の80%を歩行程度の速度、16%をジョギング程度で過ごし、時速12kmを超えるのは4%程度のようです。また、バスケットボールのトップリーグであるNBAでは試合中のスプリント速度は時速18km程度です。

競技力向上に必要な走り

競技によって必要な走る距離が変わることで、必要な走りの質が変わることはわかったでしょうか。それでは、各競技に必要な走りのトレーニングがどのようなものか考えてみましょう。サッカーであれば90分間ジョギング程度の走りをする中で10~30mの全力ダッシュを50本、バスケットボール・テニスになると必要な距離は短くなりますが、やはりジョギング程度の強度を長く続けながら繰り返し短い距離を走る能力が求められます。この能力は間欠的持久力と呼ばれ、yo yoテストや20mシャトルラン等の体力テストでその能力を測定することができます。スポーツ科学という学問では、競技を分析して必要な身体能力を検証、その能力に必要なトレーニングを考案していきます。スポーツを大好きな学生がスポーツ科学を学び、スポーツに貢献できることが本学の魅力の一つだと思います。

協力/静岡産業大学

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