香りと食品、地域、感性のチカラ
静岡産業大学誌上セミナー
講師/熊王康宏先生
香りと匂い
生物は、身の危険を察知するため、嗅覚に依存しています。嗅覚は、他の感覚、例えば、視覚や聴覚に比べると、記憶を呼び起こしやすい感覚です。香りがもたらす記憶によっては、「懐かしい匂い」など、以前見た風景などを思い出すことがあります。
香りは、「よいにおい」と解釈され、匂い(臭い)は、「いいにおい」や「悪いにおい」のように快・不快のどちらの嗅覚表現にも使います。香りは、古来からも嗅覚に基づく言葉ではありましたが、匂い(臭い)は、視覚に関する言葉だったのです。
香りと食品の関係性
ある香りを嗅ぐことにより、運動機能が向上した結果が、科学的にも証明されています。また、頭脳が良くなったように感じる香りまで登場しています。香りは、交感神経を活性化させ、集中力が増加することを導かせるようです。
ある香料を添加したソーセージを食べて評価した結果、パリパリした食感で、「ジューシー感」があり、肉を柔らかく感じさせ、さらには「塩っぽさ」、「すっぱさ」を感じさせていたことからも、「おいしさ」が増している結果となりました。また、同系統の果実系香料を添加した場合、人の感じ方は異なる結果となりました。科学的にも、おいしさを上層とする階層構造が確認され、香りによって、人の潜在意識における構造が異なることも証明できました。
こうした結果を検証し、新しい商品を開発するためには、感性工学のチカラが必要になります。評定尺度法などを用いて、人の心の構造を把握し、加えて客観的評価の指標として、脳波、血流、顔面温度、心拍数等を計測し、「快適性」を考えていくことになります。
スポーツグッズなど、機能性を重視する“もの”は、その人間工学的な設計に限界があり、商品開発の技術が平衡化している現状で、各企業も、「快適性」を設計できる感性工学に依存しています。
地域の香り
静岡県の特産物として、頭に浮かぶものといえば、お茶とミカンだと思います。また、これだけではなく、メロン、バラも、静岡県は収穫量、作付面積が全国上位に位置づけられています。こうした地域における特産品の香りが、どのように心の中で印象づけられているのかを把握するために、感性評価手法によって調査したことがあります。その結果、これらの緑茶、ミカン、メロン、バラとした4種の香りには、“親和的”、“受動的”という側面があることが分かりました。こうした結果から、人の感性に基づく印象を把握できたため、静岡県における各種のPRについての基本コンセプトとして、様々な取り組みに応用して、こうした研究が活用できることになります。
静岡県を訪れた人たちの記憶の中に、こうした香りの記憶が潜在意識の中に組み込まれており、この香りを嗅ぐことにより記憶が呼び起こされ、静岡県人の印象が、“親和的”であると感じることがあるかもしれません。
協力/静岡産業大学
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