リトミックってなんだろう!?

静岡産業大学

静岡産業大学誌上セミナー
講師/入江眞理先生

子どもたちが音楽と一緒に歩いたり走ったり!!
楽しくて深いリトミックのヒミツ、教えます。

「リトミック」とは?

皆さんは「リトミック」という言葉を聞いたことがありますか。

「リトミック」は、ギリシャ語の eurhythmy”(ユーリズミー)に由来し、「よい流れ」という意味をもっています。この「よい流れ」とは、音楽の流れだけでなく、スポーツにおけるアスリートのよいフォームや、優れた動きを指すこともあったようです。

さて、この「リトミック」、子どもの頃に保育所や幼稚園で、あるいは、習い事として経験した方もいらっしゃるかもしれません。日本では主に、子どものための教育として知られていますが、もともとは、音楽の教育法として考え出されたものでした。

今から100年以上も前、スイス人の音楽教師、エミール・ジャック=ダルクローズが、音楽を感じたり、表現したりするためには、「音楽とともに体全体を動かすことが大切だ!」と考えて実践したのが始まりでした。その後、研究を続けたジャック=ダルクローズは、この教育法が、音楽的な能力を養うだけではなく、広く子どもの発達に寄与するものであることを確信するようになりました。

子どものリトミックってどんな活動?

現在、このようなリトミックを保育所や幼稚園で保育の活動として取り入れているところも少なくありません。

ジャック=ダルクローズが考えたリトミックの教育法は、ソルフェージュ、リズム運動、即興演奏の3つで構成されていますが、保育の現場では、「リズム運動」を行っているところが多いようです。先生が演奏する音楽に合わせて、子どもは様々な身体表現をします。例えば、「うさぎになってお散歩しよう」という先生の言葉がけに、子どもたちは先生が弾くピアノの音からうさぎをイメージし、長い耳を表現したり、飛び跳ねたりします。子どもたちは一人ひとり、知っているうさぎを思い浮かべ、自分ができる動きで表現するのですから、正解も間違いもありません。

リトミックの第一の目的は、音楽と動きが一致した時の心地よさを子どもたちが味わうことなのです。リトミックにおいては、様々な音楽と動きが統合された体験を積み重ねることで筋肉感覚を養い、音楽の理解や表現につなげていきます。

楽しくて深いリトミックのヒミツ

保育におけるリトミックでは、音楽が動きに働きかける力、感情に働きかける力によって、子どもたちは体全体を大きく動かして身体表現を楽しみます。それらは、子どもの考えや感情の表れであり、他者の表現に対する気づきの機会です。自分とは違う表現に出会うことによって、他者の存在を認識し、自分の存在についても再認識しているのです。

リトミックにおける音楽と動きを統合する体験の積み重ねは、筋肉感覚を育み、音楽理解と多様な表現をもたらします。そして、子どもたちは、音楽による身体表現活動によって、自分を認識し、他者理解へと向かいます。リトミックが、子どものための教育として広く認められているヒミツは、楽しいだけではない、このような深いところにあるのです。

協力/静岡産業大学

静岡産業大学 つなぐ

関連記事