17年ぶりにこれまでを上回る記録が出たが、ペルー国籍のため日本記録とはならなかった。日本国籍を取得した彼女が今考えることとは。

大学にいる間に自己ベストを出したい。

青木アリエ 日本体育大学 陸上競技部

陸上を始めたのは舞阪中学校入学後。「当時は部活動に所属することが半ば強制で(笑)。性格上、団体競技は向いていないと思っていた所、陸上部の顧問の先生に誘われたので、入部することにしました。練習はみんなと同じように楽しくやっていましたので、全く特別な選手ではなかったです」と話すが、中学3年生時に100mと200mで全国大会に出場。「全国大会では全く歯が立ちませんでしたが、陸上を通していろいろな方と知り合えたので、それが財産です」

元々は中学で陸上は辞めるつもりだったが、東海大学付属静岡翔洋高校に誘われたことで、高校でも競技を継続することにした。「大した成績も残せてないのに、菅間先生が声を掛けてくださったので、もう少しだけ自分を信じてみようと思いました」と当時を振り返る。

転機となったのは1年時の冬。それまでは100m、200mを主戦場としていたが、この時400mに転向した。「1年の冬季練習で体力がついちゃって(笑)。400mをやっていた先輩が卒業して枠が空いたので、400mで大会に出場することになりました。そうしたらインターハイで6位になってしまって(笑)。そこから本格的に400mを始めることになりました」

当時は高校2年生。走るたびにタイムが上がり、陸上が面白くなり始めていた。しかし、最上級生になると、「もっといい成績を残さなければ」と思い詰め、タイムが伸び悩む日々が続く。「高校2年生の時に全国で入賞したこともあって、3年生になればもっと成績を残せるはずだと勝手に思っていました。そんなプレッシャーに耐えられなくなって、タイムが出なくなってしまいました。まあ、高校3年間やりきったし、このまま終わろうと思っていた矢先、今度は日本体育大学の大塚先生から『一緒に陸上やらないか』と声を掛けられて(笑)。もう少しだけ陸上を続けることにしました」

日本体育大学の陸上部に入部して驚いたのは練習量。「高校の時はとにかく走る量が多く、練習がキツかったのですが、大学の練習は朝7時45分から9時までの一時間ほどで、量もさほど走りません。一本、一本に集中して走るので、自分には合っていると感じてはいましたが、入学当初はこのリズムに馴染めず、タイムは全然伸びませんでした。

転機となったのは1年の冬季練習。先生と一緒に全てを見直しました。これがラストチャンスだと感じていたこともあり、納得できるまで何度も話し合い、試してみました。すると『これだ!』という走り方が見つかりました。2年の冬からはウェイトトレーニングを始めたことで、体が大きくなり、楽に腕を振れるようになりました。それに合わせてストライドも伸びてきました」

迎えた2025年5月。エコパスタジアムで行われた『静岡国際陸上競技大会』。女子400mに出場した彼女は51秒71で走り、優勝。このタイムは日本記録を17年ぶりに更新する日本最高タイム。一躍、国内最速選手へと駆け上がった。ただ、この時の彼女はペルー国籍(父がペルーと日本のハーフ、母がペルーとイタリアのハーフ)の外国人選手扱いであったため、日本記録とは認定されなかった。※翌月、日本国籍を取得。「日本記録にならないと聞かされた時は特に悔しさはなく、むしろプレッシャーにならなくて良かったなと思ったのと、もう一度、日本記録に挑めるチャンスをもらえたなとポジティブに捉えられました。実はこの大会はシーズン最初の大会だったので、順位を狙うというよりも、今の自分はどの位のタイムで走れるのかということを考えていました。ですので、緊張もなく、ノビノビと、自分の走りができたいい大会でした」

何気なく始めた陸上。今は日本のトップランナーとして競技を続ける。彼女が頑張る理由とは何か。「いろいろな先生が声を掛けてくださったお陰でここまでやれています。高校から寮生活で親にもたくさん迷惑を掛けてきました。そういう方々に恩返ししたいなと思って頑張っています」

一つの出会いに耳を傾けてみることで、誰よりも自分を信じてみることで、その後の人生は大きく変わる。そんな彼女が今、部活に励む高校生たちに伝えたいことは。

「まずは感謝の気持ちを忘れないこと。これが一番大切だと思います。スポーツなので、結果が出る時、出ない時があります。結果が出ないと辞めたいと思うことがあると思いますが、続けていたら良いこともあると思います。私がまさにそうでした。何度も辞めようと思いました。その度に助言に耳を傾け、自分を信じ、今に至ります。皆さんも自分で自分を信じてあげてほしいです」

部活が、そこらのちょっと足の速い女の子の人生を変えた。内気でプレッシャーに弱い女の子の性格を変えた。

間違いなく、部活には意味がある。


Profile
2004年6月4日生まれ。舞阪中学校で陸上を始め、3年時には全中の女子100mに出場。東海大学付属静岡翔洋高校の2年時に総体の女子400mで6位。日本体育大学に進学すると、インカレの200m、400mで活躍。2025年、静岡国際の400mで51秒71をマーク。6月に日本国籍を取得。2026世界陸上混合1600mリレー日本代表。


 

関連記事